「…魔法で分身を作ったなんて知られたら大目玉だわ。。お願い、間に合って!」

アリスはバレた時のことを考えるだけで背中がゾッとした。


「国王陛下達は夏の休暇でコカールに?」

「そうよ。休暇は3週間後からだけどあっちで公務を入れたみたい。」


「…行かないんですか?」


「ええ。わたしは王宮に残るわ。」

アリスは眉間に皺を寄せながら言った。

シドはリアンから聞いた話を思い出しそれ以上は何も聞かなかった。


***

暫く走るとようやくコカール城が見えて来た。

王宮からひたすら走り続けて来たが、アリスはシドの魔法のおかげで休憩なしでも大丈夫だった。

馬を停めて、シドとアリスは植木に隠れて城の様子を見た。

既に馬車は到着してみんな降りた後だった。


「…ねぇ、あなたの作った私の幻影って人から話しかけられたら返事はできるの?」


「…まぁ、いいえかはいの簡単な返事だけだが…」

誰かに気づかれる前にどうにか入れ替わらないと…


「近づいてみよう。」

すると、シドは辺りに手を翳した。すると、手を翳した景色がぐらっと揺れた。

「…何をしたの?」

「目眩しの呪文。これで門番の目をくらませられる。」

アリスは自分の手が透けている事に気が付いた。

門番は目を回してその場に座り込んだ。

「…行こう。」

シドとアリスは尻餅をついている門番の横を通ってコカール城敷地内に入って行った。