魔法使い時々王子

それからも、同じようなことが何度か続いた。

午後の茶会、回廊での小さな集まり、形式ばらない音楽の夕べ。
どれも穏やかな催しのはずなのに、アリスの立ち位置だけが、いつも微妙にずれている。

隣に座るはずの場には、別の貴婦人が先に腰を下ろしていたり、
気づけば一席分、距離を置かれていたり。

誰かが露骨に何かを言うことはない。
失礼な言葉を投げかけられることもない。

それでも、胸の奥に小さな引っかかりだけが残った。

「……アリス様」

茶会の後、ルーナが声を落とした。

「おかしいですね」

アリスは小さく息を吸った。

「やっぱり、そう思う?」

「はい。偶然にしては、少し続きすぎています」

ルーナは言葉を濁しながら、視線を遠くへやった。
そこには、いつも同じ顔ぶれがいた。
ガーデンパーティーで見覚えのある女性たち。
ニーナの傍にいた記憶のある者たち。

彼女たちは直接アリスに近づくことはない。
ただ、席の配置や人の流れの中で、
わずかな“ずれ”を生み出しているだけだった。

一方――

その様子を、少し離れた場所から静かに見ている者がいた。

エレオノーラは、ティーカップを置くと、
何気ない仕草で視線を巡らせた。

、ニーナの取り巻きたちの方へ、ほんの一瞬だけ視線を向け、
そのまま、何事もなかったかのように紅茶へと戻した。