魔法使い時々王子

数日後、王宮で小規模な昼餐会が開かれた。
格式ばった式典ではなく、穏やかな雰囲気の集まりで、アリスも少し肩の力を抜いて臨んでいた。

会場に入り、案内された席を見て、アリスはほんの一瞬だけ足を止めた。

……あれ?

名札は、確かに自分のものだ。
間違いではない。
けれど、その位置は、どこか微妙だった。

本来なら、もう少し前だったはず。
今日はセオも出席予定だったが、体調が整わず欠席しているが、本来セオのいる席の、すぐ隣とは言わないまでも、自然に言葉を交わせる距離に座るものだと、アリスは思っていた。


しかし実際には、ひとつ、ふたつ分、間が空いている。

「……おかしいわね、」

小さく息を整え、アリスは何事もなかったように席に着いた。
周囲の貴族たちは談笑を続けており、誰かがこちらを気にかけている様子もない。

それなのに。

料理が運ばれても、会話が弾んでも、アリスの胸の奥には、言葉にできない引っかかりが残ったままだった。

隣の席とは、なぜか会話が途切れがちで、
視線を向けても、ふっと逸らされることが多い。

露骨に避けられているわけではない。
けれど、歓迎されているとも言い難い。

――私、何かしたかしら。

理由が見つからないまま、違和感だけが静かに積もっていく。

アリスは背筋を伸ばし、微笑みを崩さずに食事を続けた。
今はまだ、問いただすことも、確かめることもできない。

ただ、「何かが少しずつずれている」
その感覚だけが、確かにそこにあった。