魔法使い時々王子

エレオノーラは静かにアリスを見つめ、穏やかな声で言った。

「何か困ったことがあれば、いつでも頼ってくださいな」

その言葉に、アリスは少しだけ肩の力が抜けた。

「ありがとうございます。エレオノーラ様は多くの公務を担っていらっしゃいますし……何かわからないことがあれば、ご相談させていただきます」

エレオノーラは小さく首を振る。

「確かに、セオの体調のこともあって、公務の数は多いかもしれません。でも――あくまで、わたくしは代理にすぎません」

そう言って、まっすぐにアリスを見据える。

「次期国王はセオ。そして、その妃となるのがあなた様です。
あなた方が築く新しい時代を、わたくしは心から楽しみにしていますよ」

その言葉は重く、けれど押しつけがましさはなかった。
むしろ、未来を静かに託すような響きだった。

アリスは、自分の中で何かがすとんと落ちた気がした。

――怖い人だと思っていた。
威厳があって、近寄りがたい存在だと。

けれど、こうして言葉を交わしてみれば、エレオノーラは驚くほど優しく、思慮深い女性だった。

その優しさが、あえて前に出ず、影に潜むものだということを、アリスはまだ知らない。

後日ーー
アリスはセオの部屋を訪れていた。
エレオノーラと二人でお茶をした時のこと、ルーナから忠告を受けていたものの、実際に会ってみると想像していた人物像とはまるで違っていたことをセオに話した。

話を聞いたセオは、穏やかに微笑んだ。

「確かに、エレオノーラは勘違いされやすい人です。多くの公務を担っているため、権限を握っているように見えるのでしょう。しかし、姉にはそのような考えはまったくありません。何かあれば、遠慮せず頼ってみてはどうかな。」