魔法使い時々王子

子供だけど大人のような不思議な少年リト。
幽霊でないと分かってアリスは、ずっと胸の奥に引っかかっていたことを、思い切ってリトに聞いてみることにした。

「ねえ、リト。ガーデンパーティーでね……ニーナという方が、私のことを見ていたの。とても悲しそうな顔で。あの人のこと、知ってる?」

その名を聞いた瞬間、リトはわずかに目を見開いた。そして、何かを隠すように、すっと視線を逸らす。

「……知ってるよ」

短くそう答えてから、リトは少し間を置いた。

「ニーナは、兄さん――セオの元婚約者だ」

その言葉を聞いた瞬間、アリスの胸の中で、ばらばらだった欠片が音を立てて繋がった気がした。

「……やっぱり」

あのときの、ニーナの表情。
無理に笑おうとして、でもどうしても隠しきれなかった哀しみ。

ずっと理由がわからず、心に引っかかっていた違和感が、ようやく形を持った。

アリスは、ぎゅっとスカートの裾を握りしめる。
自分がこの国に来た意味、その裏で失われたものの存在を、はっきりと意識してしまったから。

胸が、静かに、でも確かに痛んだ。