アリスは中に入り、天井まで続く本棚を見上げながら、ゆっくりと歩いた。
古い紙の匂いと、ひんやりとした空気が肌に触れる。
――どうして、こんなにたくさんの本があるのかしら。
図書館は想像していた以上に広く、高い窓から柔らかな陽の光が差し込んでいた。
その光は床に長い影を落とし、時間さえも静止しているように思えた。
人の気配はない。
――やっぱり誰もいないのね。
そう思った、その時だった。
奥の方に置かれた椅子に、誰かが座っているのが目に入った。
子供……?
十歳くらいだろうか。
少年は小さな体には不釣り合いなほど分厚い本を片手に、黙々とページをめくっていた。
それは、子供向けの絵本などでは到底なかった。
少年は、気配を感じ取ったのか、ゆっくりと顔を上げる。
その視線が、まっすぐにアリスを捉えた。
一瞬、言葉を失う。
アリスはごくりと喉を鳴らした。
その時――
カン、と図書館の時計が澄んだ音を響かせた。
――しまった。結婚式のリハーサルがあるんだった。
現実に引き戻されたアリスは、はっとして踵を返す。
もう一度振り返りたい衝動を抑えながら、足早に図書館を後にした。
少年の視線が、背中に残っているような気がした。
古い紙の匂いと、ひんやりとした空気が肌に触れる。
――どうして、こんなにたくさんの本があるのかしら。
図書館は想像していた以上に広く、高い窓から柔らかな陽の光が差し込んでいた。
その光は床に長い影を落とし、時間さえも静止しているように思えた。
人の気配はない。
――やっぱり誰もいないのね。
そう思った、その時だった。
奥の方に置かれた椅子に、誰かが座っているのが目に入った。
子供……?
十歳くらいだろうか。
少年は小さな体には不釣り合いなほど分厚い本を片手に、黙々とページをめくっていた。
それは、子供向けの絵本などでは到底なかった。
少年は、気配を感じ取ったのか、ゆっくりと顔を上げる。
その視線が、まっすぐにアリスを捉えた。
一瞬、言葉を失う。
アリスはごくりと喉を鳴らした。
その時――
カン、と図書館の時計が澄んだ音を響かせた。
――しまった。結婚式のリハーサルがあるんだった。
現実に引き戻されたアリスは、はっとして踵を返す。
もう一度振り返りたい衝動を抑えながら、足早に図書館を後にした。
少年の視線が、背中に残っているような気がした。



