「ねぇ、あれは何を売っているの?いい香りね!」

アリスは屋台を見つけて駆け寄った。

「いらっしゃい!!お嬢さんお一ついかが?」

「わぁ美味しそう!」

アリスは焼きたてのマフィンを受け取った。

シドは慌ててお金を払った。

「あ、ごめんなさい…そうよね、お代がいるわよね。私お金持っていなくて…」

「…大丈夫だよ。」

アリスはマフィンを一口かじると、ほっぺに手を当てた。

「甘くておいしーい。」

きっと王宮では毎日豪華な食事が用意されているであろうが、アリスは屋台のマフィンにいたく感動した様子だった。

その後は広場でやっている大道芸を見たり、花屋のワゴンで小さなブーケを買ったり。

町に流れる大きな川を渡る船を眺め、路地裏では遊ぶ子供たちに、お姫様見たいと言われアリスは少しドキッとした。

本当に楽しそうにしているアリスを見てシドも自然と笑みが溢れた。

「こんな楽しいこと、どうして今まで誰も教えてくれなかったの」

「……教えたら困るだろ、王宮が」

「でも……ここにいると、生きてるって感じがする」