⸻
翌日、午後。
アリスはハンナが丁寧に仕上げてくれた淡いクリーム色のドレスに身を包み、胸元をそっと整えた。
「とってもお似合いです、アリス様!」
元気いっぱいのハンナがはしゃいだ声をあげ、ルーナは横で静かに一礼する。
ガーデンパーティーの会場に向かうと、すでに庭は初夏の花々と人々のざわめきに満ちていた。
招かれた貴族や他国の使節が色とりどりの衣装で広がり、さわやかな風がテーブルクロスを揺らす。
アリスはルーナに案内されながら、ひとりひとりに微笑みを向けていった。
「イスタリアの王女殿下、ようこそ」
「長旅、お疲れではありませんか?」
「ミロの地を気に入っていただければ幸いです」
どの言葉にも丁寧に応じ、軽く会釈し、また次へ──。
慣れない環境での社交に少し疲れを覚えはじめた頃、アリスはふと視線を感じて振り向いた。
奥のソファ席。
木漏れ日が斜めに差し込むその場所に、一人の女性が座っていた。
ブラウンの髪を柔らかく波打たせ、後ろでゆるく結んでいる。
淡いピンクのドレスがよく似合う、とても可愛らしい女性だった。
周りには二、三人の客がいて、彼女は穏やかに微笑みながら会話をしているように見えた。
しかし──。
アリスと目が合ったその瞬間だけ、彼女の表情はふっと色を失った。
胸の奥をぎゅっと押さえつけるような、深い悲しみ。
どうして?
初めて会うはずなのに、アリスは思わず息をのんだ。
彼女はすぐに微笑みに戻り、また会話へと視線を戻したが、
その一瞬の「悲しみ」は胸に残ったざわめきのようにアリスの心から消えなかった。



