シドは王宮の書庫の奥、一番人が来ない窓際の机に座り、アリス宛の手紙を書いていた。
ペンを走らせながら、時おり窓の外を見ては、遠いミロ王国の彼女を思い浮かべる。
「……よし、こんなものか」
最後の一文を書き終えると、そっと息を吐き、手元の羊皮紙を丁寧に折ろうとした——その瞬間。
コツ、コツ、と控えめな靴音が書庫に響いた。
シドは反射的に肩を跳ねさせ、驚いて手紙を背中に隠そうとしたが、慌てたせいではらりと床へ落ちてしまった。
「あら、紙鳥?」
いつの間にかシドの背後に立っていたのは、魔法大臣ロザリアだった。
長い外套を翻し、落ちた羊皮紙に視線を落とすと、唇に微笑を浮かべた。
「い、いえ、その……」
言い訳を探して口ごもるシド。
ロザリアはその様子が可笑しいのか、くすっと喉を震わせた。
「紙鳥は便利よ。遠国への手紙には最適じゃない?」
からかうでもなく、ただ柔らかい声音。
シドは耳まで赤くしながら目を逸らした。
ロザリアは落ちた手紙を拾い上げることもせず、ただひと言、
「息は三回かけて、指を鳴らすのよ」
とだけ言い残し、軽やかに書庫を後にした。
静けさが戻ると、シドは机に置いていた魔法の本を引き寄せた。
「三回……?いや、ここには“二回で十分”って書いてあるんだけど……」
ロザリア自身が書いたその本の該当ページを何度も見返し、
シドは思わず深い溜め息をついた。
ペンを走らせながら、時おり窓の外を見ては、遠いミロ王国の彼女を思い浮かべる。
「……よし、こんなものか」
最後の一文を書き終えると、そっと息を吐き、手元の羊皮紙を丁寧に折ろうとした——その瞬間。
コツ、コツ、と控えめな靴音が書庫に響いた。
シドは反射的に肩を跳ねさせ、驚いて手紙を背中に隠そうとしたが、慌てたせいではらりと床へ落ちてしまった。
「あら、紙鳥?」
いつの間にかシドの背後に立っていたのは、魔法大臣ロザリアだった。
長い外套を翻し、落ちた羊皮紙に視線を落とすと、唇に微笑を浮かべた。
「い、いえ、その……」
言い訳を探して口ごもるシド。
ロザリアはその様子が可笑しいのか、くすっと喉を震わせた。
「紙鳥は便利よ。遠国への手紙には最適じゃない?」
からかうでもなく、ただ柔らかい声音。
シドは耳まで赤くしながら目を逸らした。
ロザリアは落ちた手紙を拾い上げることもせず、ただひと言、
「息は三回かけて、指を鳴らすのよ」
とだけ言い残し、軽やかに書庫を後にした。
静けさが戻ると、シドは机に置いていた魔法の本を引き寄せた。
「三回……?いや、ここには“二回で十分”って書いてあるんだけど……」
ロザリア自身が書いたその本の該当ページを何度も見返し、
シドは思わず深い溜め息をついた。



