魔法使い時々王子

セオはとても色白で、細く華奢な身体をしていた。長めのブロンドの髪が光を受けて柔らかく揺れ、目は驚くほど透き通った青色をしている。病弱で育ったと聞いていたが、その佇まいには不思議な気品と静かな強さがあった。

アリスが部屋に入ると、セオは微笑みを浮かべた。

「やぁ、ようこそ。長旅で疲れてはいないかい? アリス、と呼ばせてもらうよ。僕はセオだ。」

隣には対照的に屈強な体つきの男が控えていた。鋭い目を持ち、警戒心を隠そうともしない。

アリスは、イスタリアで教え込まれた通りの礼儀でミロ王国の挨拶をし、セオの前に進み出た。セオはうなずき、優しい手振りで椅子に座るよう促す。

「まずは、道中無事でなにより。さっそくだが、婚儀の日にちについて話しておこう。イスタリア王国の希望通り、二週間後に執り行う。」

そこまで言ったところで、隣の男がわざとらしく咳払いをした。

「二週間後は“大地の祝日”です。婚儀の日取りとしては適切ではないかと。」

アリスはわずかに目線を動かし、その男の名を探った。

セオは小さくため息をついた。

「アリス、すまない。この者は私の側近のウィルだ。」

ウィルは深々と頭を下げたが、その表情には一切の笑みがない。

「ウィル、大地の祝日でも構わない。それから、イスタリアから提出された式の流れだが、この通りに執り行うよ。」

セオが静かに言うと、ウィルはすぐさま反論するように言葉を重ねた。

「ですが、このスケジュールではセオ様のお身体に大きな負担がかかります。無理をさせるわけにはまいりません。」

その声音には、アリスへの配慮は一切なく、まるでイスタリアそのものを非難するかのような棘があった。
優しいセオの笑顔とは対照的に、ウィルの態度はあからさまな敵意だった。

ただ、セオはアリスのほうへ視線を戻し、その表情には確かな誠意が宿っている。

その違いが、アリスの胸に複雑なざわめきを残した。