魔法使い時々王子

王宮に着くと、入り口前にはずらりと貴族たちが並んでいた。色とりどりの衣装を身にまといながらも、どこか冷えた視線をこちらに向けている。アリスは喉の奥がきゅっと締まるのを感じ、ごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりとその列のあいだを歩き出した。

まるで品定めされているような視線。それでも背筋だけはまっすぐに伸ばし、顔を上げて歩いた。王女としての最後の矜持だった。

王宮の中へ案内されると、外観以上に装飾の美しい世界が広がった。壁には細かな彫刻、天井には緻密な絵画が描かれ、光を反射するガラスの飾りが静かに揺れている。イスタリアの王宮ほど広くはないが、その分ひとつひとつが丁寧で、どこか温かい。

通された部屋はイスタリアで使っていたものよりかなり狭い。けれど、アリスは不思議と落ち着きを感じた。必要なものだけが整然と置かれ、窓から柔らかい光が差し込んでいる。

部屋の奥には、小さな扉があった。まるで隠し部屋のようなその空間に足を踏み入れると、机と椅子、それから小さな棚がひっそりと佇んでいる。ミロ王国の姫が使っていた部屋なのだろうか――そんな想像が頭をよぎる。

すると、外からメイドたちの声が聞こえてきた。

「このドレス……すごいわ。刺繍が細かい……」
「宝石までこんなに……イスタリアの姫って本当に……」

アリスは思わず苦笑した。
出迎えの時、ミロ王国の貴族たちが着ていたのは、イスタリアの豪華な衣装に比べるとずっと質素だった。それで納得がいった気がした。

ひととおり部屋を見て回り、アリスは窓を開けた。
冷たいが澄んだ風が頬を撫でる。外には美しく整えられた庭が広がり、その向こうにはミロ王国の街並みが静かに続いていた。

「……綺麗」

思わず漏れた小さな声が、誰もいない部屋にふわりと消えていった。