――何時間、馬車は走ったのだろう。
揺れに身を任せながら、アリスは短い眠りと覚醒を幾度も繰り返していた。
小窓の外には、見たことのない風景が次々と流れていく。
森を抜け、渓谷を越え、穏やかな丘陵地帯を進み――その度に、アリスの胸の奥は少しずつ強張っていった。
どれだけ眠っていただろう。
「コンコン」と、控えめに扉が叩かれる音が響いた。
「……アリス様、到着いたしました」
ゆっくりと瞼を開けると、馬車はすでに止まっていた。
アリスは深く息を吸い、震える指でカーテンを開け、小窓の外を覗いた。
そこには――ミロ王国の王宮があった。
イスタリア王宮ほど巨大ではない。だが、
その外壁に施された繊細な彫刻、淡い金色の装飾、流れるようなアーチの連なり。
どれをとっても優雅で、洗練されており、まるで一枚の美しい絵画の中に迷い込んだようだった。
(……綺麗)
思わず息を呑む。
けれど同時に、胸の奥に小さな痛みが走る。
ここで、これから自分は生きていくのだ――
あの温室で、最後にシドと別れた夜から、まだ数日しか経っていないのに。
「アリス様、どうぞ」
扉が開かれ、外の光が差し込む。
アリスはゆっくりと足を下ろした。
その瞬間、冷たい空気が頬を撫で、彼女はほんの少しだけ肩を震わせた。
王宮の前には、数名のミロ王国の使用人たちが並んでいた。
その視線には好意も敵意もなく――ただ、無表情。
歓迎を示す者は誰ひとりとしていない。
アリスは静かに息を整えると、背筋を伸ばして一歩踏み出した。
(大丈夫……私は、もう決めたんだ)
新しい生活が、ここから始まる。
揺れに身を任せながら、アリスは短い眠りと覚醒を幾度も繰り返していた。
小窓の外には、見たことのない風景が次々と流れていく。
森を抜け、渓谷を越え、穏やかな丘陵地帯を進み――その度に、アリスの胸の奥は少しずつ強張っていった。
どれだけ眠っていただろう。
「コンコン」と、控えめに扉が叩かれる音が響いた。
「……アリス様、到着いたしました」
ゆっくりと瞼を開けると、馬車はすでに止まっていた。
アリスは深く息を吸い、震える指でカーテンを開け、小窓の外を覗いた。
そこには――ミロ王国の王宮があった。
イスタリア王宮ほど巨大ではない。だが、
その外壁に施された繊細な彫刻、淡い金色の装飾、流れるようなアーチの連なり。
どれをとっても優雅で、洗練されており、まるで一枚の美しい絵画の中に迷い込んだようだった。
(……綺麗)
思わず息を呑む。
けれど同時に、胸の奥に小さな痛みが走る。
ここで、これから自分は生きていくのだ――
あの温室で、最後にシドと別れた夜から、まだ数日しか経っていないのに。
「アリス様、どうぞ」
扉が開かれ、外の光が差し込む。
アリスはゆっくりと足を下ろした。
その瞬間、冷たい空気が頬を撫で、彼女はほんの少しだけ肩を震わせた。
王宮の前には、数名のミロ王国の使用人たちが並んでいた。
その視線には好意も敵意もなく――ただ、無表情。
歓迎を示す者は誰ひとりとしていない。
アリスは静かに息を整えると、背筋を伸ばして一歩踏み出した。
(大丈夫……私は、もう決めたんだ)
新しい生活が、ここから始まる。



