魔法使い時々王子

アリスとシドの密会を、影からそっと見つめる者がいた。エミリーだ。
薄闇に紛れるように息を潜め、2人の最後の抱擁と別れの言葉を確かに耳に刻む。

やがてアリスが温室を去り、シドがひとり立ち尽くしているのを確認すると、エミリーは音もなくその場を離れた。

王宮の外れ、森の小径へ。
そこには馬も連れずにひっそりと待機していた黒衣の男がいた。焚き火も灯さず、ただ気配を消して立っている。

エミリーは足を止め、低い声で告げた。

「――ジル様に伝えて。
アリス様とシド様は、互いの気持ちを確かめ合い……そして今夜、永遠の別れを告げました。」

男は短く頷くと、闇に溶けるように方向を変え、すぐさま歩み去った。

エミリーはその背中を見送りながら、小さく息を吐いた。
この報せが、どんな未来を呼ぶのか――その答えは、まだ誰にも分からない。