シドはアリスをそっと腕の中に受け止めた。
アリスの肩が小さく震え、目元には涙が滲んでいた。
「大丈夫?」
思わず漏れたシドの言葉に、アリスは胸に顔を埋めたまま、小さく首を振った。
「……シド、あなた……何か面倒なことになったりしない?」
涙で少し掠れた声。それでもアリスの瞳は真っ直ぐシドを見上げていた。
シドはその視線から逃げず、ゆっくりと答えた。
「大丈夫だ。あの国に、俺はもう必要ない。兄上は正式に国王になるそうだ。今もほとんどの公務を引き継いでいるらしい。」
そう言うシドの声は落ち着いていたが、どこか諦めの色が滲んでいた。
その時――
王宮の高い塔から、夜を告げる鐘の音が響いた。
ゆっくりと、静かに、深く。
アリスはその音に背中を震わせ、次の瞬間、ぽろりと涙をこぼしながらシドの胸に顔を押しつけた。
「……次に生まれ変わったら」
涙混じりの声が、夜の温室に溶けていった。
「あなたと……自由に恋がしたい。」
その言葉は、儚くて、でも確かで。
シドの胸を鋭く締めつけた。
アリスは顔を上げ、そっとシドの頬に触れた。
そして――ことばの代わりに、シドの唇へ静かにキスを落とした。
短く、けれど永遠のように長く感じる口づけ。
離れると、アリスは無理にでも微笑んでみせた。
泣き腫らした瞳のまま、それでも気丈に。
「ありがとう、シド。……行くわね。」
それだけ言い残し、アリスはゆっくりと温室の扉に向かった。
最後に一度だけ振り返り、微笑み、小さく頭を下げる。
扉が閉まる音は驚くほど軽く、
けれどシドの心には、重く、深く響いた。
彼はしばらくその場に立ち尽くした。
温室にはもうアリスの姿はない。
あるのは、アリスが残していった温もりと、花の香りと、静寂だけ。
やがてシドは小さく息を吐き、
握りしめた拳をゆっくりと開いた。
「……手紙は、必ず届ける。」
その誓いだけが、温室に落ちていった。
アリスの肩が小さく震え、目元には涙が滲んでいた。
「大丈夫?」
思わず漏れたシドの言葉に、アリスは胸に顔を埋めたまま、小さく首を振った。
「……シド、あなた……何か面倒なことになったりしない?」
涙で少し掠れた声。それでもアリスの瞳は真っ直ぐシドを見上げていた。
シドはその視線から逃げず、ゆっくりと答えた。
「大丈夫だ。あの国に、俺はもう必要ない。兄上は正式に国王になるそうだ。今もほとんどの公務を引き継いでいるらしい。」
そう言うシドの声は落ち着いていたが、どこか諦めの色が滲んでいた。
その時――
王宮の高い塔から、夜を告げる鐘の音が響いた。
ゆっくりと、静かに、深く。
アリスはその音に背中を震わせ、次の瞬間、ぽろりと涙をこぼしながらシドの胸に顔を押しつけた。
「……次に生まれ変わったら」
涙混じりの声が、夜の温室に溶けていった。
「あなたと……自由に恋がしたい。」
その言葉は、儚くて、でも確かで。
シドの胸を鋭く締めつけた。
アリスは顔を上げ、そっとシドの頬に触れた。
そして――ことばの代わりに、シドの唇へ静かにキスを落とした。
短く、けれど永遠のように長く感じる口づけ。
離れると、アリスは無理にでも微笑んでみせた。
泣き腫らした瞳のまま、それでも気丈に。
「ありがとう、シド。……行くわね。」
それだけ言い残し、アリスはゆっくりと温室の扉に向かった。
最後に一度だけ振り返り、微笑み、小さく頭を下げる。
扉が閉まる音は驚くほど軽く、
けれどシドの心には、重く、深く響いた。
彼はしばらくその場に立ち尽くした。
温室にはもうアリスの姿はない。
あるのは、アリスが残していった温もりと、花の香りと、静寂だけ。
やがてシドは小さく息を吐き、
握りしめた拳をゆっくりと開いた。
「……手紙は、必ず届ける。」
その誓いだけが、温室に落ちていった。



