シドは少し遠くを見るように視線を彷徨わせ、記憶を手繰るように続けた。
「王宮には……俺の居場所なんてなかった。次期国王である兄がいて、俺は“いなくても困らない存在”だった。」
抑えた声なのに、長い年月の重さが滲み出る。
「しかも子どもの頃の俺は、魔法がうまく制御できなくて……よく暴走した。そのせいで、一度……従姉妹を怪我させたことがある。」
アリスがはっと息をのんだ。
「そんな……」
「だから父上とは、それ以降……何年も顔を合わせることはなかった。俺が近づくと周囲が緊張するのが分かった。“ここに居場所はないんだ”って、10歳くらいのときにようやく理解したんだ。」
静かに吐き出された言葉が、温室の空気に沈んでいく。
「16になったとき……もう限界だった。誰にも告げず、城を抜け出した。そして、この国に来たんだ。魔法使いとして生きていける――たったそれだけで、十分だと思った。」
そこまで話し終えたシドは、軽く息を吐いた。
アリスはしばらく言葉を失い、ただシドを見つめていた。
揺れる瞳の奥に湧き上がる感情が、ひとつでは足りないほど複雑に重なっている。
やがて、震える声が落ちた。
「……そんな孤独の中に、たったひとりで耐えてきたのね、シド……」
アリスの指がそっとシドの手に触れた。
その温かさは、まるで彼がこれまでの年月で失ってきた“誰かに触れられる感覚”を思い出させるようだった。
「王宮には……俺の居場所なんてなかった。次期国王である兄がいて、俺は“いなくても困らない存在”だった。」
抑えた声なのに、長い年月の重さが滲み出る。
「しかも子どもの頃の俺は、魔法がうまく制御できなくて……よく暴走した。そのせいで、一度……従姉妹を怪我させたことがある。」
アリスがはっと息をのんだ。
「そんな……」
「だから父上とは、それ以降……何年も顔を合わせることはなかった。俺が近づくと周囲が緊張するのが分かった。“ここに居場所はないんだ”って、10歳くらいのときにようやく理解したんだ。」
静かに吐き出された言葉が、温室の空気に沈んでいく。
「16になったとき……もう限界だった。誰にも告げず、城を抜け出した。そして、この国に来たんだ。魔法使いとして生きていける――たったそれだけで、十分だと思った。」
そこまで話し終えたシドは、軽く息を吐いた。
アリスはしばらく言葉を失い、ただシドを見つめていた。
揺れる瞳の奥に湧き上がる感情が、ひとつでは足りないほど複雑に重なっている。
やがて、震える声が落ちた。
「……そんな孤独の中に、たったひとりで耐えてきたのね、シド……」
アリスの指がそっとシドの手に触れた。
その温かさは、まるで彼がこれまでの年月で失ってきた“誰かに触れられる感覚”を思い出させるようだった。



