魔法使い時々王子

シドはゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。

「……俺は、アスタリト王国の第二王子だ。兄が一人いて、俺は次男として生まれた。」

アリスは黙って頷き、続きを促す。

「母さんは……俺が五歳のときに亡くなった。それからは、兄とは別の離れ塔で、乳母に育てられた。」

淡々と語る声の奥に、長い年月が押し込められている。

「俺は、生まれつき魔法使いだった。でも……王家ではこれまで、魔法使いが生まれたことは一度もなかったらしい。だから、父上は酷く落胆したそうだ。」

そこまで言ったところで、アリスが小さく声を落とす。

「……魔法使いは、だめなの……?」

問いかけというより、祈るような響きだった。

シドは一度視線を伏せ、短く首を振った。

「俺の国では、魔法使いはもうほとんどいない。そして……王家では“前例”がない。『不吉だ』って、そう扱われた。父上は……俺が本当に自分の子かどうか、母さんを疑い始めたんだ。」

アリスの目が揺れた。

「そんな……」

「母さんは、苦しんで……病気になって亡くなった。」

シドはごく静かに、しかしはっきりと言う。

「俺のせいだって、誰も言わなかったけど……誰も否定もしなかった。」

アリスは堪えきれず、強く首を横に振った。

「……酷い。そんなの……酷すぎるわ。あなたは何も悪くないのに。」

夜の温室にアリスの震える声だけが落ちていく。

シドは苦笑のようにかすかに唇を動かし、続けようと息を吸った――。