翌日。アリスの部屋には朝の光が柔らかく差し込み、リアンは静かにアリスの髪を梳いていた。
アリスは椅子に腰掛けたまま、小さな箱を膝の上でそっと開いていた。
中には、夫となるミロ王国のセオ王子の肖像画が収められている。
リアンが手を止め、鏡越しにアリスを見つめた。
「……アリス様。大丈夫ですか?」
アリスはゆっくり蓋を閉じ、かすかな笑みを浮かべて頷く。
リアンはその横顔に、深い疲れの色が滲んでいるのを見逃さなかった。
「お疲れが出ているようですね。無理もありません。突然決まったご婚姻ですし……」
アリスは、閉じた箱を両手で抱きしめながら、小さく呟く。
「――私の結婚なんて、ただの政治の道具よ。」
リアンは言葉を失い、そっと櫛を置いた。
少し間を置いて、困ったように微笑む。
「セオ王子は……どんな方なのでしょうね。」
アリスはその問いに、曇った瞳で首を横に振る。
「わからないの。夫になる人なのに……私は何も知らない。」
アリスの声は震えてはいないのに、どこか泣き出しそうに聞こえた。
リアンはそっとアリスの肩に手を添え、何も言わずに寄り添うしかなかった。
アリスは椅子に腰掛けたまま、小さな箱を膝の上でそっと開いていた。
中には、夫となるミロ王国のセオ王子の肖像画が収められている。
リアンが手を止め、鏡越しにアリスを見つめた。
「……アリス様。大丈夫ですか?」
アリスはゆっくり蓋を閉じ、かすかな笑みを浮かべて頷く。
リアンはその横顔に、深い疲れの色が滲んでいるのを見逃さなかった。
「お疲れが出ているようですね。無理もありません。突然決まったご婚姻ですし……」
アリスは、閉じた箱を両手で抱きしめながら、小さく呟く。
「――私の結婚なんて、ただの政治の道具よ。」
リアンは言葉を失い、そっと櫛を置いた。
少し間を置いて、困ったように微笑む。
「セオ王子は……どんな方なのでしょうね。」
アリスはその問いに、曇った瞳で首を横に振る。
「わからないの。夫になる人なのに……私は何も知らない。」
アリスの声は震えてはいないのに、どこか泣き出しそうに聞こえた。
リアンはそっとアリスの肩に手を添え、何も言わずに寄り添うしかなかった。



