次の日、シドは昼はロザリアの雑務に追われ、夜は遅くまで書類整理をしてから、久しぶりにレオの店の扉を押した。
店内は木の香りとあたたかな灯りに包まれ、いつものように常連の笑い声が響いている。
カウンターにはリアンがすでに座っていた。
「こんばんは、シド。」
リアンは微笑んで振り返ったが、どこか疲れが見える。
「アリスの準備で忙しいのか?」
隣に座ったシドが尋ねると、リアンは苦笑混じりにため息をつく。
「ええ……。持っていく衣類から王家への贈り物まで、全て段取りを組む必要があって。
アリス様も頑張っていらっしゃるけれど、やはり大変よ。」
「リアンだから任されてるんだよ。」
シドが言うと、
「そう言ってくれると救われるわ。」
リアンは小さく笑って、飲みかけのグラスに視線を落とした。
時計を見て席を立とうとしたその瞬間、
上着のポケットから二枚の紙がひらりと床へ落ちた。
「あっ……」
シドが拾い上げて手渡すと、リアンは軽く目を丸くした。
「……オペラのチケットだ。珍しいものを持ってるんだな。」
リアンは少し恥ずかしそうに微笑む。
「ええ。アルバさんが……くれたの。“よければご一緒にどうですか”って。」
「……アルバが?」
シドの声は無意識に低くなった。
「…ええ。誰かから貰ったみたい。」
リアンの言葉にシドは何も言わずに黙り込んだ。
その沈黙と視線を感じて、リアンは頬を染めながら視線をそらした。
「…知ろうとしてるだけよ。まだ何も知らなかったから、それだけよ。」
照れ隠しのように早口で言って、リアンはそそくさと帰る支度を始めた。
扉が閉まるのを見送りながら、レオがグラスを磨きつつ言った。
「アルバって人、粘り強いな。……なんだか、あのリアンが少しその気になってるようにも見えたぞ。」
店内は木の香りとあたたかな灯りに包まれ、いつものように常連の笑い声が響いている。
カウンターにはリアンがすでに座っていた。
「こんばんは、シド。」
リアンは微笑んで振り返ったが、どこか疲れが見える。
「アリスの準備で忙しいのか?」
隣に座ったシドが尋ねると、リアンは苦笑混じりにため息をつく。
「ええ……。持っていく衣類から王家への贈り物まで、全て段取りを組む必要があって。
アリス様も頑張っていらっしゃるけれど、やはり大変よ。」
「リアンだから任されてるんだよ。」
シドが言うと、
「そう言ってくれると救われるわ。」
リアンは小さく笑って、飲みかけのグラスに視線を落とした。
時計を見て席を立とうとしたその瞬間、
上着のポケットから二枚の紙がひらりと床へ落ちた。
「あっ……」
シドが拾い上げて手渡すと、リアンは軽く目を丸くした。
「……オペラのチケットだ。珍しいものを持ってるんだな。」
リアンは少し恥ずかしそうに微笑む。
「ええ。アルバさんが……くれたの。“よければご一緒にどうですか”って。」
「……アルバが?」
シドの声は無意識に低くなった。
「…ええ。誰かから貰ったみたい。」
リアンの言葉にシドは何も言わずに黙り込んだ。
その沈黙と視線を感じて、リアンは頬を染めながら視線をそらした。
「…知ろうとしてるだけよ。まだ何も知らなかったから、それだけよ。」
照れ隠しのように早口で言って、リアンはそそくさと帰る支度を始めた。
扉が閉まるのを見送りながら、レオがグラスを磨きつつ言った。
「アルバって人、粘り強いな。……なんだか、あのリアンが少しその気になってるようにも見えたぞ。」



