アリスの婚姻が発表されてから、三週間が過ぎた。

王宮の一角はすっかり花嫁支度の空気に包まれ、アリスの居室では朝から晩まで布の擦れる音や、侍女たちの足音が絶えなかった。

準備の中心にいるのはリアンだった。

持っていく荷物、式で着る衣装、向こうの生活で必要になる細々とした物まで、ひとつひとつ丁寧に吟味し、アリスに確認を取りながら進めていく。

アリス自身もまた忙しく、ミロ王国の歴史やしきたり、礼儀作法を学ぶため、机に向かう時間が増えた。

書物を読み込んでいるうちに気づけば日が傾き、灯りがともる。
そんな日が続いていた。

気づけば周囲の空気も視線も、すべてがアリスが「ミロ王国へ嫁ぐ王女」であることを示していた。