魔法使い時々王子

夜の静けさが深く沈み、星の瞬きだけがふたりを照らす。

シドは一度、目を閉じた。
そしてゆっくりと、彼女の名を呼ぶ。



「アリス…本当は、もっと早く言うべきだったんだ。」

「俺は……イスタリアの生まれじゃない。――アスタリト王国の王子だった。」

「魔法を持つ王子”は、アスタリトでは歓迎されなかった。だから……逃げたんだ。本当の自分で生きられる場所を探したくて。……気づいたら、この国でただの魔法使いとして生きていた。」

シドはアリスから目を逸らさない。
逃げず、隠さず、ただ真実だけを渡すように。

「身分を偽っていたのは、誰にも知られずに、自分の力で生きてみたかったからだ。……ずっと言わなきゃと思ってた。」

ほんの一瞬、喉が詰まる。
それでも続ける。

「ごめん。
 君にだけは……本当の俺を知ってほしかった。」