魔法使い時々王子

国王は机上の書類に目を落としながら、二人に静かに告げた。

「――アリスの婚約が決まった。相手はミロ王国の第一王子セオだ」

その言葉を聞いた瞬間、ルイの表情がわずかに揺れた。
まるで「予感していたが、現実になってしまった」ような顔だった。

「……やはり、本当に進めておられたのですね」
ルイが低く呟いた。

レイが驚いたようにルイを見る。
ルイは続けた。

「確かに、父上が“アリスの縁談について検討している”とは伺っていました。しかし、話がここまで進んでいるとは思っていなかった……ましてやミロ王国とは」

国王は静かに頷いた。

「ミロ王国は小国だが、今や情勢は危うい。
セオ王子は病弱で、王家を支える後ろ盾が必要だ。
……アリスが嫁げば、ミロ王国はイスタリアの庇護下で安定する」

ルイの眉がさらに深く寄った。

「しかし父上、アリスに“他国の実権を握らせる”など――あまりにも重すぎます。
彼女の人生は……!」

「承知の上だ。」
国王の声には迷いの影があったが、それでも決意は固かった。

「これは単なる婚姻ではない。
ミロ王国の未来も、イスタリアの安定もかかっている。
アリスの縁談は、もはや王族の義務として避けられぬものだ」

ルイは奥歯を強く噛みしめた。
「縁談が“あるかもしれない”という覚悟はしていた……でも、こんな形だとは……」

国王はそこでレイに目を向ける。

「レイ、アリスには早めに知らせろ。
正式な発表は次の舞踏会だ」

「……承知しました」

レイの声は静かだが、胸の内は重く沈んでいた。

ルイもまた――
覚悟していたはずの縁談が、想像以上に冷酷な現実として迫っていることに、言葉を失っていた。