「どんなって…どうして？シドが王女を気にするなんて…」

リアンは少し暗い顔をして聞いた。


「王宮に着いた初日に会ったんだ。俺のこと庭師だと思い込んで温室の水路を直してくれって言ってきた。」


「…温室は王女様にとって大切な場所だから。前にも話したけどご家族との仲は良く無いわ。今年の夏の休暇もご家族と一緒にコカール城には行かないって言ってた…」

コカール城は王都から列車で3時間の避暑地にある王家が所有する城だ。国王はこの城がとても気に入っており家族で毎年夏を過ごしていた。


「どうして王女は家族と仲が悪いんだ？」


「そうね、まずは国王と王妃様の仲がもう随分前から冷え切っている事ね。王女様の乳母に聞いた話だと王女様が幼い頃からご両親は喧嘩ばかりの日々だったらしいわ。それを見て育ったせいもあってか、幼い頃王女様はお二人が喧嘩を始めるといつも乳母と離宮へ逃げ込んでいたらしいわ。」


「…国王と王妃の不仲説はたまに耳にするな。」

シドの言葉にリアンは深く頷いた。


「それと、王子のルイ様。既に結婚して男のお子様も生まれている。もう次と更にその次の国王までいるんだもの、王女様の肩身が狭くなるのも無理ないわ。それもあって確かにご両親共、王女様への関心が薄いのは私達でも分かるわ。だから、王宮に王女様の居場所がないって感じてもおかしくないのよ。」

リアンの話にシドは昔を思い出した。
王宮に自分の居場所がないと感じるーー。