温室の窓から差し込む光が、花々の色をいっそう鮮やかに映し出していた。
アリスは手入れを終えた鉢を少し揺らしながらため息をつく。

「…もうすぐ毎年開かれている舞踏会があるわ。」

この時期王宮では毎年恒例の催しで、国内外の貴族や王族が集まる。
煌びやかな装飾、きらめくシャンデリア、咲き誇る花々のように色鮮やかなドレス――想像するだけで、アリスの胸は少し重くなる。

「……あの華やかさ、やっぱり少し疲れちゃうわね」
アリスはつぶやき、肩をすくめた。
人々の視線、社交上の礼儀、外交の駆け引き……王女としての責務は尽きることがない。

「アリスならちゃんとこなせるよ」
シドはやさしく言った。
アリスは少し顔を赤らめて、微笑んだ。
「シド……ありがとう」
その笑顔は柔らかく、ほんの少し照れくさい。
シドはその瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。
目の前の王女を守りたい、支えたい――そんな気持ちが、抑えきれずに心に広がる。

外の庭からは風に揺れる木々の音が微かに聞こえ、温室の中は静かだが、二人の間には微妙な緊張感と穏やかさが混ざった空気が漂っていた。
舞踏会の華やかさと賑わいのことを思いながらも、今ここにある静かな時間が、アリスにとって少しだけ安らぎとなる――そんな瞬間だった。