「久しぶりじゃない!どう?仕事は忙しい??」
「ハァ……」
人に聞かれるたびにため息が出る。
いちいち説明するのもうんざりだ。
「何よ?なんかバタバタ仕事してる姿は何度か見かけたけど…なんてったっけ?魔法大臣付き……補佐官?」
「あーもう、そんな大層な名前が付くような仕事は何一つしてねーよ。それより、キースはまた旅に出てるのか?」
シドは無理やりリアンの話を遮り話題を変えた。
「ああ。キースはアスタリト王国にまた行ってるよ。随分気に入ったようだ。」
アスタリトの名前を聞いてシドの動きが一瞬止まった。
「随分その国が気に入ったのね。それよりシド。ちゃんと王宮での仕事ぶりを話してちょうだいよ。」
リアンの言葉にシドは溜息をついて酒を一口飲んだ。
「…だから、魔法についてはまだ何も学んでいない。毎日ゴロゴロしてる魔法大臣の雑用をしてるだけだよ。」
「ロザリア様ってそんな感じの人なの?だって彼女はすごい人なのよ。魔法大臣がロザリア様に変わってから魔物の被害もほとんど無くなったし。」
「…俺にはただの仕事サボってるおばさんにしか見えないね。」
シドの言葉に、リアンは顰めっ面をした。
本当にそうなんだ。でも彼女から感じられる魔力は相当なものだ。
シドもこんな魔力の持ち主には今まで会ったことは無い。
「…まぁ、たまの休みだ。仕事のことは忘れてゆっくりしろよ。何か作ってやるよ。」
レオは酒をもう一杯グラスにつぐと、厨房の中に入って行った。
「…そういえば、リアンはアリス王女に仕えているんだよな?」
「ええ、そうよ。」
「アリス王女って、どんな人だ?」
シドはこの間の温室のことを思い返した。
後になってあの温室で突然水路を直せと言ってきたのはこの国の王女だと知った。



