「ええ、そう思うわ」
彼女は白い花弁に指を触れながら、少しだけ考えるように間を置いた。
「――自由でいることって、案外勇気がいるわよね」
シドは顔を上げた。
アリスの横顔には、どこか懐かしい哀しさが宿っている。
「王族として生まれた人間は、選ばれた道の上を歩くのが当たり前。
でもダリウスは、自分で道を選んだ。
それって……簡単なことじゃないわ」
言葉の端に、自分への小さな皮肉のような響きが混じっていた。
シドはそのことに気づきながら、何も言わなかった。
温室の天井から差し込む光が、ふたりの間を淡く照らす。
遠くで小鳥の声がして、風が白いカーテンをゆらした。
「……あなたと、少し似ているかもしれないわね」
アリスの声は静かだった。
彼女自身、その言葉が思わず漏れたものだと気づいていた。
シドは驚いたように目を瞬き、すぐに視線を落とす。
「俺が……?」
「ええ。あなたも、自分の居場所を自分で見つけようとしている」
アリスは穏やかに言った。
「まるで、決められた枠に収まることを拒むように」
その言葉に、シドの胸の奥で何かがわずかに震えた。
返す言葉を探しながらも、見つからない。
代わりに、彼は花壇の方を見つめた。
小さな芽が、光に向かってまっすぐに伸びている。
「……ただ、誰かの役に立てる場所にいたいだけだ。」
その答えに、アリスは静かにうなずいた。
けれど、胸の奥でなぜか少しだけ切なくなった。
「それでも、あなたのように言える人は少ないのよ」
アリスはそう言って、優しく微笑んだ。
彼女は白い花弁に指を触れながら、少しだけ考えるように間を置いた。
「――自由でいることって、案外勇気がいるわよね」
シドは顔を上げた。
アリスの横顔には、どこか懐かしい哀しさが宿っている。
「王族として生まれた人間は、選ばれた道の上を歩くのが当たり前。
でもダリウスは、自分で道を選んだ。
それって……簡単なことじゃないわ」
言葉の端に、自分への小さな皮肉のような響きが混じっていた。
シドはそのことに気づきながら、何も言わなかった。
温室の天井から差し込む光が、ふたりの間を淡く照らす。
遠くで小鳥の声がして、風が白いカーテンをゆらした。
「……あなたと、少し似ているかもしれないわね」
アリスの声は静かだった。
彼女自身、その言葉が思わず漏れたものだと気づいていた。
シドは驚いたように目を瞬き、すぐに視線を落とす。
「俺が……?」
「ええ。あなたも、自分の居場所を自分で見つけようとしている」
アリスは穏やかに言った。
「まるで、決められた枠に収まることを拒むように」
その言葉に、シドの胸の奥で何かがわずかに震えた。
返す言葉を探しながらも、見つからない。
代わりに、彼は花壇の方を見つめた。
小さな芽が、光に向かってまっすぐに伸びている。
「……ただ、誰かの役に立てる場所にいたいだけだ。」
その答えに、アリスは静かにうなずいた。
けれど、胸の奥でなぜか少しだけ切なくなった。
「それでも、あなたのように言える人は少ないのよ」
アリスはそう言って、優しく微笑んだ。



