王宮の奥、花々が四季を忘れて咲き乱れる温室。
シドは資料を届けるためにその脇を通りかかった。
だが、ガラス越しに見えた光景に、ふと足が止まる。
アリスがいた。
その向かいには、旅装のままの青年――ダリウス。
長旅の埃も気にせず、彼は軽やかに笑っていた。
「砂の都では夜になると空が紫に染まるんだ。まるで星が地上に降りてくるみたいで……」
「まぁ、素敵……!」
アリスは目を輝かせ、羨ましげに頬を上気させた。
「王宮にいると、こうして誰かの旅の話を聞くのが一番の楽しみなの。自由さが羨ましいわ」
ダリウスは軽く笑い、頷くだけで何も言わない。
アリスが知っていることだから、説教や慰めも必要ない。自由を選んだ彼の立場を、アリスは理解している。
シドはそのやり取りを遠くから見ていた。
アリスの顔が生き生きと輝く様子、自然に笑う姿――
その光景に胸の奥がざわつく。 声をかけることもせず、資料を抱えたまま、静かに通りすぎるシド。
アリスがちらりと振り返った。
「……あの人、シドっていうの。ロザリアの補佐をしてるのよ」
「へー、魔法使いなんだな。珍しい。」
ダリウスはシドの横顔を見ながら言った。
シドは資料を届けるためにその脇を通りかかった。
だが、ガラス越しに見えた光景に、ふと足が止まる。
アリスがいた。
その向かいには、旅装のままの青年――ダリウス。
長旅の埃も気にせず、彼は軽やかに笑っていた。
「砂の都では夜になると空が紫に染まるんだ。まるで星が地上に降りてくるみたいで……」
「まぁ、素敵……!」
アリスは目を輝かせ、羨ましげに頬を上気させた。
「王宮にいると、こうして誰かの旅の話を聞くのが一番の楽しみなの。自由さが羨ましいわ」
ダリウスは軽く笑い、頷くだけで何も言わない。
アリスが知っていることだから、説教や慰めも必要ない。自由を選んだ彼の立場を、アリスは理解している。
シドはそのやり取りを遠くから見ていた。
アリスの顔が生き生きと輝く様子、自然に笑う姿――
その光景に胸の奥がざわつく。 声をかけることもせず、資料を抱えたまま、静かに通りすぎるシド。
アリスがちらりと振り返った。
「……あの人、シドっていうの。ロザリアの補佐をしてるのよ」
「へー、魔法使いなんだな。珍しい。」
ダリウスはシドの横顔を見ながら言った。



