魔法使い時々王子

討伐を終え、ノクターンの兵たちはそれぞれ休息を取っていた。火の後始末や怪我人の確認が進む中、シドは少し離れた場所で魔力の調整をしていた。
その姿を見つけたルシアンが、迷いなく歩み寄ってくる。

「シド」

名を呼ばれ、シドが顔を上げる。ルシアンは腕を組んだまま立ち、周囲に人がいないことを確認してから、静かに口を開いた。

「お疲れ。アルバとの連携も見事だった。…正直、期待以上だ」

シドは一瞬きょとんとし、それから肩をすくめるように小さく笑った。

ルシアンはわずかに目を細め、笑ったようにも見えたが、その表情はすぐに普段の無表情へと戻る。

「よくやった。――やはり我が部隊に来てくれと頼みたくなるが、ロザリア殿に叱られるな。」

短い言葉を残し、ルシアンは背を向けて去っていった。
その姿を見送りながら、シドは小さく息を吐き出す。思った以上に胸の奥が温かく、驚いた自分に気づいていた。