「…シド、こっちの本を棚に戻しておいて。」

「3時のお茶にクッキーを持って来て。」

「ねぇ、この洋服に付いたシミを落としてちょうだいな。」


シドが王宮に来て2週間が経とうとしていた。

魔法大臣付魔導補佐官としてロザリアの元で働いている。

大層な名前だが、完全に名前だけ立派で実態はひどいものだった。


「……これのどこが魔法大臣付魔導補佐官だ。」

ロザリアから片付けるよう言われた本を書庫に返しに来てシドは思わず愚痴をこぼした。

魔法について教えると言われていたが、実際はロザリアから言われた雑用をしているだけだった。

まだ一度も魔法のまのじもロザリアからは聞いていない。

2週間見ていて、最近シドはロザリアが本当にすごい魔法使いなのかも分からなくなって来た。

まともに仕事してるところを見た事がない。

いつもフワフワしているし、机に向かってもすぐ昼寝をし始める。

とにかく甘いものが好きでいつもおやつをもってこいと言う。紅茶にも砂糖6杯が彼女のルールだ。


ロザリア宛に世界中から手紙が届いているが開けているところを見たことはない。中には王家の紋章入りのまであるのに…。


大量の本を書庫に戻し終えてロザリアの執務室に戻った。

すると、ロザリアの姿はなく代わりにエドワードが立っていた。


「…エドワード。」

「シド、調子はどうです??」

エドワードの言葉にシドは視線を外して小さく溜息をついた。そんなシドを見てエドワードは分かったようにふっと笑みを溢した。


「随分疲れているようですね。無理もない、もう2週間働き詰めですよ。ロザリア様からのご指示でそろそろ休暇をとってください。今日と明日。いかがですか?」


「あ…えっと、はい。。」

エドワードはシドの返事を聞くとニコッと笑顔を見せてその場を後にした。


「…休暇。。」