ルシアンは広げた地図の上に手を置き、低い声で告げた。
「敵が狙うのは王宮そのものではない。王都の周辺、あるいは要所だ。
王宮の結界と防衛は魔法大臣ロザリアが張っている以上、突破は不可能。
だが、外で暴れられれば市民に被害が出る」
彼の指が地図の外縁をなぞる。
「そこで俺たちノクターンが出る。
第一に、王都の外縁で侵入をいち早く察知し、偵察部隊が即座に報告する。
第二に、敵が町へ入り込む前に迎撃。市街での戦闘は避ける。
第三に、もし潜入が確認された場合――アルバとシド、お前たちが先頭に立ち、鎮圧にあたる」
ルシアンの声が張り詰めた空気を切り裂く。
「王宮を揺るがすことはなくとも、王都の混乱は許されない。
この任務に一切の失敗はないと心得ろ」
**
漆黒の隊服に身を包んだノクターンが、王宮の回廊を進む。
黒一色の列が通り過ぎるだけで、空気が変わった。
王宮に仕える婦人たちが、思わず足を止める。
控えめなざわめきが広がり、針仕事をしていた侍女や文書を抱えた書記官の女性たちまでが、息をのむように視線を向けた。
シドはその反応に思わず足を緩める。
「……なんだ、この注目は」
横に並ぶアルバが苦笑し、声を潜めて言った。
「ノクターンは憧れの的だからな。特に婦人方にはな」
彼の目線の先で、兵士たちの漆黒の装いに視線を送る女官たちの顔が、どこか熱を帯びている。
「なかでもルシアン様の人気は抜群だ。冷静沈着で、強く、誠実。王宮に仕える女たちの半分は、彼に一度は憧れを抱いたことがあるだろうな」
アルバの言葉にシドは目を瞬かせた。
なるほど、ただの兵団ではないらしい。
「敵が狙うのは王宮そのものではない。王都の周辺、あるいは要所だ。
王宮の結界と防衛は魔法大臣ロザリアが張っている以上、突破は不可能。
だが、外で暴れられれば市民に被害が出る」
彼の指が地図の外縁をなぞる。
「そこで俺たちノクターンが出る。
第一に、王都の外縁で侵入をいち早く察知し、偵察部隊が即座に報告する。
第二に、敵が町へ入り込む前に迎撃。市街での戦闘は避ける。
第三に、もし潜入が確認された場合――アルバとシド、お前たちが先頭に立ち、鎮圧にあたる」
ルシアンの声が張り詰めた空気を切り裂く。
「王宮を揺るがすことはなくとも、王都の混乱は許されない。
この任務に一切の失敗はないと心得ろ」
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漆黒の隊服に身を包んだノクターンが、王宮の回廊を進む。
黒一色の列が通り過ぎるだけで、空気が変わった。
王宮に仕える婦人たちが、思わず足を止める。
控えめなざわめきが広がり、針仕事をしていた侍女や文書を抱えた書記官の女性たちまでが、息をのむように視線を向けた。
シドはその反応に思わず足を緩める。
「……なんだ、この注目は」
横に並ぶアルバが苦笑し、声を潜めて言った。
「ノクターンは憧れの的だからな。特に婦人方にはな」
彼の目線の先で、兵士たちの漆黒の装いに視線を送る女官たちの顔が、どこか熱を帯びている。
「なかでもルシアン様の人気は抜群だ。冷静沈着で、強く、誠実。王宮に仕える女たちの半分は、彼に一度は憧れを抱いたことがあるだろうな」
アルバの言葉にシドは目を瞬かせた。
なるほど、ただの兵団ではないらしい。



