ルシアンの合図で、兵士が包みを持ってきた。
「これを着ろ。討伐に参加する以上、君もノクターンの一員だ」

差し出されたのは、漆黒の軍服だった。
余計な装飾はなく、ただ深い黒のみで仕立てられている。それだけで王宮の誰もが「ノクターン」と一目でわかる、特別な服だ。

シドは包みを受け取り、黙って袖を通した。
厚手の布地が肩を包み、いつもの軽やかな外套とは違う重みが身体にのしかかる。

「……思ったよりも、ずいぶん重いな」

思わず漏らした言葉に、アルバが隣で笑う。
「その重さが誇りなんだよ。黒衣を着る者は、誰もが戦場で仲間を守る覚悟を背負ってる」

シドは小さくうなずき、胸元の留め具をしっかりと締めた。
漆黒の布に包まれた自分の姿は、鏡がなくともいつもとは違うとわかる。
「……なるほど。確かに、ただの小間使いには見えないな」

アルバが肩を叩き、にやりと笑う。
「お前が黒衣を着る日が来るなんてな。悪くないぞ」

ルシアンは短く一瞥し、静かに言葉を落とした。
「これで正式に、作戦に臨む顔ぶれは揃ったな」