魔法使い時々王子

滞在の最終日、ルーサ王子の一行は馬車に乗り込むため、王宮の前に集まっていた。

ルーサはルイ王子に深く頭を下げ、にこやかに御礼を述べる。
「今回の訪問、心から楽しませてもらった。お礼を言わせてくれ」

続いて、アリスの方へ少し体を向け、笑みを浮かべながら言った。
「アリス、君と過ごした日々も忘れられないものとなった。君の恋がうまく行くことを願っている」

その言葉は、周囲には聞こえないように、しかしアリスにははっきりと届く距離で告げられた。

アリスは驚きと共に顔を赤らめ、馬車の背中に消えていくルーサを見送る。
(やっぱり、不思議な人……今回の日々は、忘れられないわ)

馬車の傍らにはロザリアと共にシドも立っていた。ルーサの背を見つめながら、静かに心の奥底で芽生えた感情に向き合う。
表には出さず、いつも通りの落ち着いた顔を保ちながらも、胸の内は小さなざわめきで満ちていた。

馬車がゆっくりと走り去り、ルーサの笑みが遠ざかる中、アリスは小さく息をつき、思わず微笑んだ。

(不思議な人……でも、今日の日々は忘れられない)

その横で、シドは静かに心の奥のざわめきに向き合い、ロザリアもまた、穏やかな目で二人の様子を見守る。

王宮へと戻る道すがら、三人はそれぞれに思いを胸に刻み、今回の訪問の余韻を静かに味わっていた。