「舞踏会のことを考えていたのですね」
翌朝、控えの間で紅茶を口にしたアリスに、レイが穏やかに問いかけた。
アリスはカップを持つ手をわずかに止める。
「……どうして?」
「顔に出ていました」
レイの声に、舞踏会の光景がよみがえる。
ルーサの奇妙で自由なステップ、そして自分に向けられた「君」という声。
胸が少しだけ高鳴ったのに、結局、彼と踊ることはなかった。
「……私、断ったわけじゃないの。ただ……」
「ただ?」
「……踊れなかったの」
レイは静かにアリスを見つめる。
彼女自身が言葉にできない迷い――その背後に、誰の影があるのか。
失礼な言い方かもしれませんが……アリス様がルーサ王子を気になさるとは思いませんでした」
レイは淡々と告げたが、その眼差しはどこか探るようだった。
アリスは小さく息を吐き、カップを置く。
「……そうね。私自身、少し驚いてるわ」
舞踏会の記憶が胸をよぎる。
「なんだか王子っぽくないの。立場やしきたりなんて気にせず、自由に振る舞っていて……」
言葉を探すように間を置き、アリスは続けた。
「私と違うからかもしれない。素直で、壁がなくて……あの人の前だと、不思議と安心できるの」
アリスの言葉にレイは少し黙り込み、そして優しい笑顔を向けた。
「……ですが、アリス様にはアリス様にしかない強さがあります。そのことを、どうかお忘れなきように」
「……ありがとう、レイ」
翌朝、控えの間で紅茶を口にしたアリスに、レイが穏やかに問いかけた。
アリスはカップを持つ手をわずかに止める。
「……どうして?」
「顔に出ていました」
レイの声に、舞踏会の光景がよみがえる。
ルーサの奇妙で自由なステップ、そして自分に向けられた「君」という声。
胸が少しだけ高鳴ったのに、結局、彼と踊ることはなかった。
「……私、断ったわけじゃないの。ただ……」
「ただ?」
「……踊れなかったの」
レイは静かにアリスを見つめる。
彼女自身が言葉にできない迷い――その背後に、誰の影があるのか。
失礼な言い方かもしれませんが……アリス様がルーサ王子を気になさるとは思いませんでした」
レイは淡々と告げたが、その眼差しはどこか探るようだった。
アリスは小さく息を吐き、カップを置く。
「……そうね。私自身、少し驚いてるわ」
舞踏会の記憶が胸をよぎる。
「なんだか王子っぽくないの。立場やしきたりなんて気にせず、自由に振る舞っていて……」
言葉を探すように間を置き、アリスは続けた。
「私と違うからかもしれない。素直で、壁がなくて……あの人の前だと、不思議と安心できるの」
アリスの言葉にレイは少し黙り込み、そして優しい笑顔を向けた。
「……ですが、アリス様にはアリス様にしかない強さがあります。そのことを、どうかお忘れなきように」
「……ありがとう、レイ」



