魔法使い時々王子

音楽が流れ、舞踏会が始まった。
貴族たちが優雅に輪を描く中、ルーサは一歩踏み出した。

だが、彼の足取りは音楽と完全に合わない。
まるで自分だけ別のリズムを刻んでいるように、奇妙なステップを踏み始めたのだ。

「……!?」
貴族たちの視線が一斉に集まり、ざわつきが広がる。

しかしルーサは気にした様子もなく、満足そうに足を止めると、
「やっぱり、この広間は音がよく響く。床が鳴る音と、楽器の音が重なって……実に心地いい」
と楽しげに口にした。

空気が凍りついたが、アリスだけはクスリと笑っている。
「……本当に変わってる。でも、ちょっと面白い人かもしれない」

シドはその横顔をちらりと見た。
アリスの笑みが、なぜか胸の奥をきゅっと締めつける。
(……どうして気になるんだ、俺)
自分の感情に名前をつけられず、ただ黙って立ち続けるしかなかった。