魔法使い時々王子

ルーサ王子の謁見が終わり、控え室に案内される一行。
ざわめきの中、ロザリアは背後からかけられた声に足を止めた。

「――ロザリア。随分と立派になったじゃない」

振り向けば、深紅のドレスを纏った女が扇を口元に当てて微笑んでいた。
ハムサ国魔法大臣にして、ルーサ王子の側近――メアリー。

「……メアリー」
ロザリアの眉がわずかに動く。

「久しぶりね。昔は一緒に悪戯をして叱られたものだけど……今じゃ“魔法大臣閣下”だなんて。人は変わるものね」
メアリーは笑みを浮かべたまま、扇で軽くロザリアの肩を叩く。

「あなたは相変わらずね」
ロザリアは冷ややかに応じた。「口の軽さも、態度も」

「そう言うけど、あなたも昔は私の企みに付き合って楽しんでたじゃない」
メアリーは目を細める。「今はもう、堅物の仮面をかぶったまま?」

「私は立場をわきまえているだけよ。あなたのように振る舞えるほど、自由じゃない」

互いに微笑みながらも、その視線は火花を散らしていた。
短いやり取りののち、メアリーは涼しい顔で一礼し、ルーサのもとへと戻っていった。

残されたロザリアは小さく息を吐き、
「まったく……悪友は悪友のままね」と小さく溜息をついた。