魔法使い時々王子

華やかな出迎えが終わり、賑やかなざわめきが次第に遠のく。
アリスは緊張から解き放たれたように肩を下ろした。

その隣で控えていたレイが、周囲を気にしながら小声で囁く。
「……アリス様、ルーサ王子にはお気をつけください」

「え？」アリスは思わず聞き返す。

レイは言葉を選ぶように一瞬口を閉ざした。
「失礼ながら、あの方は――変わっておられます。気まぐれで、何を考えているのか読めないところがある。表向きは礼儀を守っておられるのですが……時に、その常識から外れた行動が周囲を困惑させるのです」

アリスは先ほどの、突然の「夢の花」の問いかけを思い出す。
確かに無礼ではなかった。けれど、胸の奥に不思議なざわめきが残っている。

「……つまり、どう接したらいいの？」

レイは眉をひそめ、低く答えた。
「深入りしないことです。必要以上に近づけば、振り回されるだけでしょう」

そう言い切ったものの、アリスの胸には「ただの変人」では片づけられない妙な興味が芽生え始めていた。