魔法使い時々王子

ルイ王子はすぐに返書をしたためた。
「イスタリアはルーサ殿下のご訪問を心より歓迎いたします」と。

ほどなくして再びハムサ国からの使者が現れ、詳細な日程が届けられる。
ルーサ王子は一週間の滞在。ルイ自らが案内役を務め、王都や名所を巡ることとなった。

さらに書簡にはこうも記されていた。
――初日と最終日に舞踏会を開き、盛大に国交の親しさを示すこと。



その知らせはやがて、アリスの耳にも届いた。
知らせを持ってきたのは、彼女の側近であるレイだった。

「アリス様。ルーサ殿下のご滞在が決まりました。一週間とのことです」

アリスは紅茶を置き、目を瞬かせた。
「……一週間も?」

レイはうなずき、淡々と続ける。
「はい。その間、殿下のご案内はルイ様がなさいます。ですが、出迎えや晩餐会、そして舞踏会にはアリス様もご参加いただくことになっています」

アリスの胸に重いものが落ちる。
また、あの華やかな場に立たねばならない――。
だが王女として、それを避けることはできない。

「……分かったわ」
アリスは小さく答え、窓の外を見やった。
夏の光に照らされる庭が眩しかったが、その心は少し曇っていた。