その夜、アリスは自室でエミリーと向かい合っていた。昼間のお茶会で助けてくれたことに、どうしてもお礼を言いたかったのだ。
「今日はありがとう。あのままでは、本当に息が詰まってしまっていたわ」
そう言うと、エミリーはにこやかに首を横に振った。
「お気になさらず。ああいう場での空気は、私もよく知っていますから」
アリスはふと気になって尋ねた。
「エミリーは、ここに来る前はどこで暮らしていたの?」
「私はアスタリトの出身です」
思いがけない答えに、アリスは息をのんだ。
「……アスタリト?」
エミリーは穏やかに続ける。
「ええ。こちらに仕える前は、向こうでもある家に支えておりました。」
「じゃあ……王子のことも知っているのね?」
問いかけると、エミリーは笑顔を崩さぬまま、はっきりと頷いた。
「勿論です。今は国王となられたジル様のことも。そして……弟君のことも」
「弟……」アリスの心臓がひときわ強く鳴る。
けれど、それ以上は尋ねなかった。なぜか、言葉が喉で止まってしまったのだ。
アリスは表面上は静かに微笑んで見せたが、胸の奥では小さなざわめきが再び広がっていた。
「今日はありがとう。あのままでは、本当に息が詰まってしまっていたわ」
そう言うと、エミリーはにこやかに首を横に振った。
「お気になさらず。ああいう場での空気は、私もよく知っていますから」
アリスはふと気になって尋ねた。
「エミリーは、ここに来る前はどこで暮らしていたの?」
「私はアスタリトの出身です」
思いがけない答えに、アリスは息をのんだ。
「……アスタリト?」
エミリーは穏やかに続ける。
「ええ。こちらに仕える前は、向こうでもある家に支えておりました。」
「じゃあ……王子のことも知っているのね?」
問いかけると、エミリーは笑顔を崩さぬまま、はっきりと頷いた。
「勿論です。今は国王となられたジル様のことも。そして……弟君のことも」
「弟……」アリスの心臓がひときわ強く鳴る。
けれど、それ以上は尋ねなかった。なぜか、言葉が喉で止まってしまったのだ。
アリスは表面上は静かに微笑んで見せたが、胸の奥では小さなざわめきが再び広がっていた。



