王宮の奥、光あふれるサロンにアリスの親戚一同が集められていた。
叔母や従姉妹たちが華やかな衣装を身にまとい、香り高い紅茶と菓子が並べられた卓を囲む。
「まあアリス、今年でもう十九歳になるのね」
「ええ、そろそろ良縁の話があってもおかしくない年頃でしょう?」
笑顔を交わしながらも、その言葉の端々は針のようにアリスの胸を刺した。
返す言葉を探すほどに居心地が悪く、ただ時間が過ぎるのを願うばかり。
心の底から――帰りたい。
その時、すっと傍らに控えていたエミリーが気配を寄せた。
「王女様、そろそろお時間です。次のお約束が……」
一瞬で場の空気を見抜いた彼女の機転に、アリスは救われる思いで立ち上がった。
「ごめんなさい、今日はここで失礼するわ」
そう告げてサロンを後にし、ようやく解放されたアリスは深く息を吐いた。
「エミリー、ありがとう。助かったわ」
「とんでもございません、王女様」
感謝を込めて笑みを返した時、アリスの心には自然とある人の姿が浮かんだ。
足は温室へと向かい、扉を開けると、そこには見慣れた後ろ姿――シドが立っていた。
叔母や従姉妹たちが華やかな衣装を身にまとい、香り高い紅茶と菓子が並べられた卓を囲む。
「まあアリス、今年でもう十九歳になるのね」
「ええ、そろそろ良縁の話があってもおかしくない年頃でしょう?」
笑顔を交わしながらも、その言葉の端々は針のようにアリスの胸を刺した。
返す言葉を探すほどに居心地が悪く、ただ時間が過ぎるのを願うばかり。
心の底から――帰りたい。
その時、すっと傍らに控えていたエミリーが気配を寄せた。
「王女様、そろそろお時間です。次のお約束が……」
一瞬で場の空気を見抜いた彼女の機転に、アリスは救われる思いで立ち上がった。
「ごめんなさい、今日はここで失礼するわ」
そう告げてサロンを後にし、ようやく解放されたアリスは深く息を吐いた。
「エミリー、ありがとう。助かったわ」
「とんでもございません、王女様」
感謝を込めて笑みを返した時、アリスの心には自然とある人の姿が浮かんだ。
足は温室へと向かい、扉を開けると、そこには見慣れた後ろ姿――シドが立っていた。



