アルバは短く別れの挨拶を告げると、練習場へ戻っていった。
その背中が見えなくなった瞬間、背後からひょっこり顔を覗かせる影があった。

「なになに? あの人、近衛隊でしょ? なんかあったのー?」
セラが戻ってきて、ポットを抱えたままいたずらっぽく目を細める。

「……別に、たいしたことじゃない」
シドは短く答えるが、セラはじっと覗き込んでくる。

「ふーん、まぁいいけど。はい!お茶。」
詳しく話してくれないシドにセラはつまらなそうな顔をしてお茶を差し出した。
さっきまでの重い会話の余韻は、少しだけ和らいだ。

――そしてその日の午後。
王宮の奥、豪奢なサロンではアリスが親戚たちに囲まれ、お茶会が始まろうとしていた。