王宮の前に着くと大門がゆっくりと開いた。
馬車が止まるとシドは目の前に聳え立つ城を見上げた。
「こちらです。そして申し遅れましたが私はエド。ロザリア様の側近を務めております。」
シドはエドの後をついて行った。
王宮内は大理石の床に、金の縁が輝く天井画。壁には歴代の王たちの肖像画が静かに見下ろしている。空気は澄んでいて、しかしどこか重い。
曲がりくねった長い回廊には、細長い窓から柔らかな光が差し込み、床に模様を落としていた。
やがて、回廊の先に黒檀の扉が見えてくる。他の扉とは異なり、魔力を帯びた銀の文様が浮かび上がっていた。エドが扉に近づくと、それらは波紋のように揺れ、静かに鍵が解かれる。
「こちらがロザリア様の執務室です。」
ギイィ。
扉は重くゆっくり開いた。
中は明るくシドは少し目を細めた。
光の中に散らかった机の向こう側に立ち外を眺めている女性が見えた。
派手な装飾もなく、身にまとっているのは深い藍色のローブ。長く結われた銀灰色の髪は静かに揺れ、その動きひとつとっても、まるで風の流れすら計算されているかのようだった。
彼女が一歩踏み出すたび、足音より先に空気がわずかに震える。
それは魔力だとすぐに分かった。だが、それは攻撃的なものではない。むしろ静かで、深く澄んでいる。湖の底に沈んだ古代の魔法陣のような――ひと目では測れない“重み”がある。
ロザリアは振り返るとシドを見て微笑んだ。
「初めまして。魔法大臣のロザリアよ。よく来てくれたわね。」
シドはロザリアの前まで来ると一礼をした。
「初めまして。シドです。」
すると、ロザリアはシドの手を取るとぶんぶんと上下に振った。
馬車が止まるとシドは目の前に聳え立つ城を見上げた。
「こちらです。そして申し遅れましたが私はエド。ロザリア様の側近を務めております。」
シドはエドの後をついて行った。
王宮内は大理石の床に、金の縁が輝く天井画。壁には歴代の王たちの肖像画が静かに見下ろしている。空気は澄んでいて、しかしどこか重い。
曲がりくねった長い回廊には、細長い窓から柔らかな光が差し込み、床に模様を落としていた。
やがて、回廊の先に黒檀の扉が見えてくる。他の扉とは異なり、魔力を帯びた銀の文様が浮かび上がっていた。エドが扉に近づくと、それらは波紋のように揺れ、静かに鍵が解かれる。
「こちらがロザリア様の執務室です。」
ギイィ。
扉は重くゆっくり開いた。
中は明るくシドは少し目を細めた。
光の中に散らかった机の向こう側に立ち外を眺めている女性が見えた。
派手な装飾もなく、身にまとっているのは深い藍色のローブ。長く結われた銀灰色の髪は静かに揺れ、その動きひとつとっても、まるで風の流れすら計算されているかのようだった。
彼女が一歩踏み出すたび、足音より先に空気がわずかに震える。
それは魔力だとすぐに分かった。だが、それは攻撃的なものではない。むしろ静かで、深く澄んでいる。湖の底に沈んだ古代の魔法陣のような――ひと目では測れない“重み”がある。
ロザリアは振り返るとシドを見て微笑んだ。
「初めまして。魔法大臣のロザリアよ。よく来てくれたわね。」
シドはロザリアの前まで来ると一礼をした。
「初めまして。シドです。」
すると、ロザリアはシドの手を取るとぶんぶんと上下に振った。



