数日後の午前。
王宮の大理石の玄関前に、深紅と金で彩られた馬車が静かに止まった。
扉に刻まれた紋章――二つの剣を背に組み合わせた双頭の鷲。それは、アスタリト王家の象徴だった。
「……アスタリトからの使者だそうです」
リアンが控えめな声でアリスに告げた。
階段を下りてくる重い足音。
玄関ホールに現れたのは、背の高い男だった。深緑の外套の下に着た礼服は雪を払い、金糸の刺繍が朝の光を反射していた。
その瞳は真っ直ぐで、何かを測るように周囲を見回す。
「イスタリア王国第一王子、ルイ殿下にお目通り願いたい」
低く響く声が、広間の空気を引き締める。
アリスは階段の上からそれを見下ろしていた。
胸の奥で、何かが静かに鳴った。
――アスタリト。
また、この名前。
セラ、そしてシドの正体を知ったあの日の会話。
それらが一本の糸で結びつき始めているような気がして、落ち着かなかった。
ルイが使者を迎えに現れ、二人は短く挨拶を交わすと奥の執務室へ消えていった。
その背中を見送りながら、アリスは無意識に手を握りしめていた。
――何が始まろうとしているの?
王宮の大理石の玄関前に、深紅と金で彩られた馬車が静かに止まった。
扉に刻まれた紋章――二つの剣を背に組み合わせた双頭の鷲。それは、アスタリト王家の象徴だった。
「……アスタリトからの使者だそうです」
リアンが控えめな声でアリスに告げた。
階段を下りてくる重い足音。
玄関ホールに現れたのは、背の高い男だった。深緑の外套の下に着た礼服は雪を払い、金糸の刺繍が朝の光を反射していた。
その瞳は真っ直ぐで、何かを測るように周囲を見回す。
「イスタリア王国第一王子、ルイ殿下にお目通り願いたい」
低く響く声が、広間の空気を引き締める。
アリスは階段の上からそれを見下ろしていた。
胸の奥で、何かが静かに鳴った。
――アスタリト。
また、この名前。
セラ、そしてシドの正体を知ったあの日の会話。
それらが一本の糸で結びつき始めているような気がして、落ち着かなかった。
ルイが使者を迎えに現れ、二人は短く挨拶を交わすと奥の執務室へ消えていった。
その背中を見送りながら、アリスは無意識に手を握りしめていた。
――何が始まろうとしているの?



