魔法使い時々王子

新年の慌ただしさが一段落した頃、ロザリアがシドのもとへとやってきた。
「アリス王女の主治医から魔法薬の依頼があったの。年末年始の疲れが出たみたいね」
そう言って、調合の担当をセラに任せた。

セラは真剣な表情でレシピに目を通し、手際よく薬を仕上げていった。
すでに新人とは思えない落ち着きだった。

完成した薬を持って、セラとシドはアリスの私室へと向かう。
セラにとって、アリス王女に会うのはこれが初めて。
シドから話を聞いていたこともあり、彼女は少し浮き足立っていた。

「こんにちはー! 魔法薬持ってきましたっ!」
部屋に入るなり、セラは明るい声で元気よく挨拶した。

アリスは少し驚いたように目を見開いた。
その瞬間、セラは勢いよく言葉を続ける。

「アリス王女様のこと、シドからよく聞いてたんです!ずっと会ってみたかったんです~!」

あっけらかんとしたその様子に、アリスは思わず小さく笑みをこぼした。
「ふふっ、そう? あなたが最近働き始めた魔法薬剤師さんなのね?」

「はいっ! セラって言います。まだまだ修行中ですが、よろしくお願いします!」

シドは少し焦ったようにセラの袖を引きながら、こっそり小声で言った。
「おい、もうちょっと言葉を選べ……相手は王女なんだぞ」

するとアリスが、その声を遮るように手を上げた。
「いいのよ、そんなふうに話してくれる人、久しぶりだもの」

その言葉に、シドは黙り込む。
――そもそも自分だって、二人きりの時は“アリス”と呼び捨てにしているじゃないか。
そう思いながら、照れくさそうに視線を逸らした。

アリスは、セラの気取らない明るさと、遠慮のない態度に心を和ませていた。
この王宮で、自分に対してこんなふうに接してくれる人はほとんどいない。
だからこそ、セラの存在がとても新鮮で、心地よかった。

彼女の無邪気な笑顔を見ているうちに、アリスの口元には自然と微笑が浮かんでいた。