プルルル
プルルルル

外は雲一つない晴天だというのに、この部屋の分厚すぎるカーテンがぴっちり閉まっているせいで光一つ差し込まない。

埃っぽい部屋にはたくさん積まれた古い本があちらこちらと置いてある。

机の上には羊皮紙が散乱しており、飲み終わったグラスに空のワインボトル、それから羽ペンは全部折れている。

プルルル
プルルルル

そんな中、先ほどからずっと電話の呼び鈴が鳴り続けていた。

モゾモゾ…

部屋の真ん中に無理やり置いてあるカウチで毛布にくるまっていた1人の男がゆっくりと身体を起こした。

「……んぁ、あい。」

眠そうな声で電話を取ると、男はふぁーっと大きな欠伸をした。

「やぁシド?俺だ、マーカスだ。またまじないを頼むよ。」

「……はい。新築の?あー、はい、はい。」

…チン。

電話をきると、シドと呼ばれた男ははぁーーっと深いため息をついた。

机の上のくしゃくしゃに丸められたローブを掴むとシドは家を出た。