「ねぇ、そういえば君全然歌ってなくない?1曲ぐらい歌おうよ!」

「え?えっと……」


他の人は一通り歌って満足したようで、なんと私に順番が回ってきてしまった。
助けを求めるようにユイの方を見るが、なんだかタツヤくんといい感じらしく、他のことなど眼中にもない様子だ。流石に私も友人の恋を邪魔するほど非情な人間ではないわけで、私が恥をかくだけで彼女の恋が実るなら甘んじて受け入れよう。
そう覚悟を決め、マイクを受け取ろうとした瞬間だった。


「え〜、僕まだ歌いたい曲ある!マイク貸してよ。」

「なんだよナギ!この子全然歌ってないから可哀想だろ?」

「いいじゃん、ね?アサちゃん、僕先歌ってもいいよね?」

「え?あ、うん……」


そう言うとナギくんはマイクを受け取り、上手な歌を披露した。
ナギくんの歌が終わるとマイクを渡そうとしてきた彼も私のことは忘れたようでそのまま歌い続け、また私を抜いた歌唱リレーが始まった。

安堵するとともに、ある考えが頭をよぎる。

ナギくん、もしかして私の事庇ってくれたのかな……