そのあとも、華恵と茉莉花は仲良さそうに館内を散策する。
「茉莉花ちゃん、見て! 宿泊者限定の浴衣プレゼントだって。着付けもしてくれるみたい」
「ええ、すごい! 可愛い浴衣がたくさんありますね」
「ね、私たちもお願いしようよ」
そう言われて、茉莉花は優樹を振り返る。
「着てみてもいいですか?」
「もちろん」
「はい。じゃあ、行ってきます」
華恵と一緒に受付のカウンターに行くと、女性スタッフは、にこやかに二人を広い和室に案内した。
お好きな浴衣をお選びくださいと言われて、二人で早速選び始める。
「茉莉花ちゃん、白瀬くんに『着てみてもいいですか?』だって。もう可愛くて!」
「えっ? なにがでしょう」
「ふふっ、全部よ、全部! あ、茉莉花ちゃん、この浴衣はどう?」
華恵が手にしたのは、白地に薄桃色の模様が描かれ、帯もピンク色の可愛らしい浴衣だった。
「素敵! でも、私には可愛すぎませんか?」
似合わないかも……と心配する茉莉花の顔を、華恵が覗き込む。
「大丈夫! 茉莉花ちゃんが可愛すぎるから」
「はい? どういうことなんですか?」
「いいから着てみて。絶対似合うと思うんだー」
押し切られて茉莉花はその浴衣を、華恵は大人っぽい紺色の浴衣を選んだ。
年配のスタッフが手際よく着付けてくれ、髪型もアップでまとめてもらう。
「髪飾りも下駄も、巾着までもらえるんだ。すごいね」
「はい。至れり尽くせりですね」
支度が整うと、スマートフォンや財布を巾着に入れる。
着替えた洋服やバッグは、あとで宿泊する部屋まで届けてくれるとのことだった。
「お待たせー」
カランコロンと小気味よい音を立てて、華恵が和室の前のソファで待っていた小澤たちのもとへ行く。
「おっ、華恵。いいな、浴衣姿」
「でしょー? 茉莉花ちゃんも、ほら! どう? 白瀬くん」
華恵が後ろから茉莉花の両肩に手を置いて、優樹の前に押しやる。
「ね? 茉莉花ちゃん、可愛いでしょ」
は、華恵さん、と茉莉花が戸惑っていると、優樹は茉莉花に見とれてから頷いた。
「ああ、よく似合ってる」
「ふふっ。だって、茉莉花ちゃん」
あ、はい、と茉莉花はドギマギしながらうつむく。
「宴会場で縁日やってるんだって。行ってみない? 茉莉花ちゃん」
「縁日ですか? 楽しそう!」
はしゃぐ華恵と茉莉花に、小澤と優樹も頬を緩めてついて行く。
射的やボールすくい、わたあめに輪投げなど、童心にかえって楽しんだあとは、江戸風鈴の絵付けもやってみた。
夕暮れになると、庭園で花火を楽しむ。
「線香花火、風流でいいわねえ」
「はい。なんだか心が落ち着きます」
しゃがんで花火を見つめている茉莉花の横顔は美しく、優樹は言葉もなく見とれる。
綺麗なうなじにも目を奪われていると、やがて線香花火がポトリと落ちた。
名残惜しむように微笑んでから、茉莉花は立ち上がる。
すると近くにいた男性二人組が、茉莉花に近づこうとしているのに優樹は気づいた。
「茉莉花、おいで」
「はい」
優樹は茉莉花の手を取ると、ウエストをグッと抱き寄せる。
男性二人組は、なんだ、と言って離れていった。
一部始終を見ていた華恵が、目を潤ませながら両手で頬を押さえ、小澤が首をひねる。
「ん? 華恵、どうした?」
「もうダメ。胸が、苦しい……」
「えっ、食べ過ぎか?」
「違うわよ! あの二人、もうキュンキュンしちゃう。はあ、なんて尊いの。愛が眩しいわ」
そう言ってうっとりしてから、真顔に戻る。
「これ以上、二人の世界を邪魔しちゃいけないわ。白瀬くん、茉莉花ちゃん! 私たち、そろそろ行くね」
振り返った茉莉花たちに、またねー!と手を振ってから、華恵は小澤と腕を組んで去って行った。
「茉莉花ちゃん、見て! 宿泊者限定の浴衣プレゼントだって。着付けもしてくれるみたい」
「ええ、すごい! 可愛い浴衣がたくさんありますね」
「ね、私たちもお願いしようよ」
そう言われて、茉莉花は優樹を振り返る。
「着てみてもいいですか?」
「もちろん」
「はい。じゃあ、行ってきます」
華恵と一緒に受付のカウンターに行くと、女性スタッフは、にこやかに二人を広い和室に案内した。
お好きな浴衣をお選びくださいと言われて、二人で早速選び始める。
「茉莉花ちゃん、白瀬くんに『着てみてもいいですか?』だって。もう可愛くて!」
「えっ? なにがでしょう」
「ふふっ、全部よ、全部! あ、茉莉花ちゃん、この浴衣はどう?」
華恵が手にしたのは、白地に薄桃色の模様が描かれ、帯もピンク色の可愛らしい浴衣だった。
「素敵! でも、私には可愛すぎませんか?」
似合わないかも……と心配する茉莉花の顔を、華恵が覗き込む。
「大丈夫! 茉莉花ちゃんが可愛すぎるから」
「はい? どういうことなんですか?」
「いいから着てみて。絶対似合うと思うんだー」
押し切られて茉莉花はその浴衣を、華恵は大人っぽい紺色の浴衣を選んだ。
年配のスタッフが手際よく着付けてくれ、髪型もアップでまとめてもらう。
「髪飾りも下駄も、巾着までもらえるんだ。すごいね」
「はい。至れり尽くせりですね」
支度が整うと、スマートフォンや財布を巾着に入れる。
着替えた洋服やバッグは、あとで宿泊する部屋まで届けてくれるとのことだった。
「お待たせー」
カランコロンと小気味よい音を立てて、華恵が和室の前のソファで待っていた小澤たちのもとへ行く。
「おっ、華恵。いいな、浴衣姿」
「でしょー? 茉莉花ちゃんも、ほら! どう? 白瀬くん」
華恵が後ろから茉莉花の両肩に手を置いて、優樹の前に押しやる。
「ね? 茉莉花ちゃん、可愛いでしょ」
は、華恵さん、と茉莉花が戸惑っていると、優樹は茉莉花に見とれてから頷いた。
「ああ、よく似合ってる」
「ふふっ。だって、茉莉花ちゃん」
あ、はい、と茉莉花はドギマギしながらうつむく。
「宴会場で縁日やってるんだって。行ってみない? 茉莉花ちゃん」
「縁日ですか? 楽しそう!」
はしゃぐ華恵と茉莉花に、小澤と優樹も頬を緩めてついて行く。
射的やボールすくい、わたあめに輪投げなど、童心にかえって楽しんだあとは、江戸風鈴の絵付けもやってみた。
夕暮れになると、庭園で花火を楽しむ。
「線香花火、風流でいいわねえ」
「はい。なんだか心が落ち着きます」
しゃがんで花火を見つめている茉莉花の横顔は美しく、優樹は言葉もなく見とれる。
綺麗なうなじにも目を奪われていると、やがて線香花火がポトリと落ちた。
名残惜しむように微笑んでから、茉莉花は立ち上がる。
すると近くにいた男性二人組が、茉莉花に近づこうとしているのに優樹は気づいた。
「茉莉花、おいで」
「はい」
優樹は茉莉花の手を取ると、ウエストをグッと抱き寄せる。
男性二人組は、なんだ、と言って離れていった。
一部始終を見ていた華恵が、目を潤ませながら両手で頬を押さえ、小澤が首をひねる。
「ん? 華恵、どうした?」
「もうダメ。胸が、苦しい……」
「えっ、食べ過ぎか?」
「違うわよ! あの二人、もうキュンキュンしちゃう。はあ、なんて尊いの。愛が眩しいわ」
そう言ってうっとりしてから、真顔に戻る。
「これ以上、二人の世界を邪魔しちゃいけないわ。白瀬くん、茉莉花ちゃん! 私たち、そろそろ行くね」
振り返った茉莉花たちに、またねー!と手を振ってから、華恵は小澤と腕を組んで去って行った。



