「いらっしゃいませ。2名様ですね。ご案内いたします」

ラウンジの入り口で招待券を見せると、ゴージャスなソファやテーブルが並ぶ店内を進み、高い天井までガラス張りになった窓際の席に案内された。

「お庭が見えて、いいですね」

ふかふかのソファにゆっくり座った茉莉花は、外の景色に目を奪われる。

するとふいに「あら? 茉莉花ちゃん?」と声がした。

「えっ、華恵さん! 小澤課長も」
「ほんとに茉莉花ちゃんだ!」

同じようにスタッフに案内されている華恵と小澤がいて、互いに驚く。

「偶然ね、茉莉花ちゃんもデート?」

そう言って微笑みながら茉莉花の隣に目を向けた華恵は、次の瞬間、驚いて目を見開いた。

「えっ、待って、白瀬くん!?」
「ええ!? ほんとだ、優樹!」

小澤も信じられないとばかりに茉莉花と優樹を見比べる。

「お前たち、いつの間に?」
「いえ、あの、えっと……」

すると様子をうかがっていたスタッフが、にこやかに口を開いた。

「お客様、よろしければ4名様ご一緒にお席をご用意いたしましょうか?」

華恵が皆を見渡す。

「それでもいい? 私、このままだと気になっちゃって」
「あ、はい。大丈夫です」

茉莉花が答えると、優樹も小澤も頷いた。
テーブルを挟んで反対側のソファに、華恵と小澤が座る。

「ねっ、早速聞いてもいい? お二人、つき合ってるのよね?」
「あ、はい。おつき合いさせていただいてます」

そう言って茉莉花は小さくなる。

「やっぱり! わあ、すごい偶然ね。私たち、このホテルで結婚式を挙げたから、その時に宿泊券とアフタヌーンティーの招待券をもらってたの。まさかこんなところで会うなんて。そっかー、茉莉花ちゃんの優くんは白瀬くんだったのね?」

茉莉花は慌てて華恵に否定した。

「華恵さん、実は部長とおつき合いを始めたのは、つい最近なんです」
「そうなの? でもよかった。茉莉花ちゃん、最近とっても幸せそうだもの。きっと素敵な恋愛してるんだろうなー、彼に大切にしてもらってるんだろうなーって思ってた。その相手が白瀬くんだって分かって、私もとっても嬉しい!」

すると小澤も感慨深げに頷く。

「ほんとだよなあ。硬派の優樹が、清水とつき合うことになったのか。お似合いだよ。よかったな、優樹。清水は入社してきた時からずっと気にかけてきた、俺の可愛い後輩だ。頼んだぞ?」

ああ、と優樹も真剣に答えた。

「ふふっ、思いがけず素敵な日になったわ。茉莉花ちゃんたちも、今夜はここに泊まるの?」
「あ、はい」
「やーん、キュンキュンする!」

華恵が両手で頬を押さえた時、3段のプレートでアフタヌーンティーが運ばれてきた。

「美味しそう! ね、茉莉花ちゃん」
「はい。どれから食べようか迷っちゃいます」
「ほんとよね。私、この為にお腹空かせて来たの」
「私もです」

ふふっと女子同士が顔を見合わせるのを、優樹たちも優しく見守る。
4人でおしゃべりしながら、美味しく味わった。