「茉莉花ー、ランチ行こう!」

12時になると同時に、沙和が立ち上がる。
わくわくした様子の沙和と社員食堂に行き、日替わりランチを前にいただきますと手を合わせたところで、早速沙和が身を乗り出してきた。

「で、話ってなに? 優くんとなにかあったの?」
「あ、うん。それなんだけどね」

茉莉花は両手を膝の上に置くと、覚悟を決めて口を開く。

「ごめんなさい。私、ずっと沙和ちゃんに嘘をついてました。本当は誰ともつき合ってません」
「はっ!? なに、いきなり。どういうこと?」

ピタリと箸を持つ手を止めた沙和に、茉莉花は全てを包み隠さず話した。

「えー!? 色々、衝撃的なんだけど! 優くんは妄想の人物だったの? あんなに細かくエピソード話してくれたのに。でもって、やっぱり茉莉花、小澤課長のことが好き……」
「さ、沙和ちゃん!」

茉莉花は必死の形相で沙和を止める。

「あ、ごめんごめん。そっか、それを隠す為に優くんが誕生したんだもんね。いやー、でも私の頭の中では、すっかりイケメンの優くんが出来上がってたよ。いつか会いたいなーって本気で思ってた。あはは!」

明るく笑う沙和に、茉莉花は身を縮こめてうつむいた。

「ごめんね、ずっと嘘ついてて。最初はその場をごまかすだけだったのが、段々エスカレートしちゃって……」
「いいよ、なんだかんだで楽しませてもらったから。それにしても茉莉花、すごい想像力だね。ひょっとして、誕生日に花束をもらったエピソードも嘘なの? 私、あの話好きだったのになー。ほら、茉莉花の名前にちなんでジャスミンの大きな花束を贈ってくれたっていう」
「うん。本当はジャスミンの花って鉢植えが主流で、切り花ではあまり出回ってないの」
「へえ、そうだったんだ。優くん、ロマンチストだなーって感心したのに。あはは!」

沙和は、これまで茉莉花が話したエピソードを思い出しては、ひとしきり笑っていた。