わくわくドキドキしながら午後の業務をこなし、定時になると茉莉花はさり気なく優樹の様子をうかがった。

パソコンを閉じて立ち上がり、ジャケットに腕を通しているのを見て驚く。

(部長、ほんとに定時に上がるんだ!)

茉莉花も急いでパソコンをシャットダウンすると、荷物をまとめて立ち上がった。

「すみません、お先に失礼させていただきます」
「あら、茉莉花ちゃん。優くんとデート?」
「あ、はい」
「いいわねー。優くんによろしくね」
「ありがとうございます。それでは」

そそくさとオフィスを出ると、エレベーターで1階まで下りる。

(えっと、駅前のカフェで待ってようかな)

そう思い、ロビーで立ち止まってメッセージを送ろうとすると、後ろから声がした。

「お待たせ、行こう」
「えっ、部長!」

足早に近づいて来た優樹は茉莉花の手を取ると、そのままロビーを横切ってエントランスを出る。

「あの、部長、手が……」

茉莉花は顔を真っ赤にしながら訴えるが、優樹はしっかり茉莉花と手を繋いだまま離す素振りもない。

そのまま優樹は、以前訪れた和食の料亭に向かった。