【お疲れ様です。お時間あれば、明日の土曜日に少しでも会えませんか?】

茉莉花はメッセージを送信すると、ちらりと部長のデスクに目を向ける。

沙和とランチを食べると早めにオフィスに戻り、お昼休みが終わる前に優樹にメッセージを送ることにした。
同じように優樹も早めに戻って来たらしく、デスクでパソコンに向かっている。

(メッセージ、気づくかな……)

そう思っていると、優樹はデスクの上のスマートフォンを手にした。

(あ、読んでくれた?)

ドキドキしながら待っていると、返事が返ってきた。

【お疲れ様。大丈夫だ。何かあった?】

何かないと会っちゃダメなのかな……と一瞬しょんぼりしたが、沙和の言葉を思い出した。

『相手を思いやりながらボールを投げるの。素直な自分の気持ちを伝えて』

そうだ、それが大事なんだと、スマートフォンを握り直して入力する。

【ただ会いたくて。ずっと寂しかったので】

思い切って送信すると、ゴトッと音がした。
目をやると、優樹の手からスマートフォンがデスクに落ちている。
そのまま優樹はカチンコチンに固まっていた。

(あれ? 大丈夫かな。ボール、暴投しちゃった?)

優樹の表情が気になり、首をかしげて遠くから覗き込もうとしていると、視線に気づいたのか優樹と目が合った。

ん?と茉莉花が見つめると、優樹は、ふいとそっぽを向く。

(えっ! もしかして、嫌われた?)

呆然としていると、メッセージが届いた。

【明日はダメだ】

ガーン!と茉莉花はショックを受ける。

(そんな、ついさっき大丈夫だって言ってたのに……)

するとまたすぐに着信があった。

【今夜会いたい】

ぱあーっと茉莉花の顔に笑みが広がる。

【はい、よろしくお願いします】
【定時で上がるから】

そしてそのあとは、優樹のパソコンを打つ音が一気に速くなった。