(何をやっているんだ、俺は)

茉莉花のマンションを出ると、優樹は自分を戒める。

(あれほど彼女に触れたり告白しないと決めたのに)

想定外の出来事に、どうにも気持ちが抑え切れなかった。
あと3秒、いや、1秒でも長くあのまま抱きしめていたら、そのまま押し倒してしまったかもしれない。
唇を奪ってしまったかもしれない。

そう思うと、自分に腹が立った。

(彼女を傷つけるようなことになったらどうする? 彼女の気持ちに寄り添い、守っていくと決めたはずだ)

だが、自分が思う以上に、既に茉莉花への気持ちは大きくなっていたのだ。
理性が効かないほど、どうしようもなく心惹かれていたのだ。

このままではいけない。
これ以上距離を縮めたら、また気持ちが込み上げてきてしまう。

少し離れなければ。
心にブレーキをかけて、敢えて彼女と接触しないようにしよう。

優樹はそう自分に言い聞かせた。